大川法律事務所
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労働者派遣法の基本から~派遣法の抜本的改正を求めて
第一. 派遣法制定の経過
 
1, 労働契約とは、労働者が労働を提供し、使用者がこれに対して報酬(賃金) を与える契約のこと(労契法6条)。
2, 派遣労働は直接の「対抗関係」にない。
いわゆる非正規労働(注)の一つ(間接雇用)。
 (注)非正規労働とは
    期間、短時間、間接雇用がそのメルクマール
派遣労働は、1985年の労働者派遣法が制定されるまでは、労働者供給 事業の一形態として職安法44条で全面禁止(趣旨は、労働強制・ピンハネ 禁止)。
3, しかし、違法人材派遣の先行と中曽根規制緩和路線の登場を背景に、以下の通り、法律の制定、改正が進む。 
 ①1985年法制定 
   対象業務は13業務に限定(ポジティブリスト方式)
   「常用代替」にならないのであればと、労働側反対運動は弱かった。
 ②1996年改正 
   対象26業務まで広がる。
 ③1999年改正
   原則解禁(ネガティブリスト方式)。
   ※これが規制緩和の頂点。 ④2003年改正
   製造業への派遣解禁。
   短期派遣期間1年から3年へと延長。    
 ※小泉人気のもと、労働側は「解雇自由法」を防ぐのが精一杯という状況であった。
4, その後、日雇い派遣を中心に、派遣労働者の不安定雇用が問題となり、
 2008年リーマンショック、
 派遣切り、そして「派遣村」と社会的問題となる。
第二. 現行派遣法の内容
 
1, 職安法4条6項で「労働者供給」とは「供給契約に基づいて労働者を他人 の指揮命令を受けて労働に従事させること」と定義し、職安法44条で禁止 されている。
2, 85年派遣法制定の際に、職安法4条6項から「労働者派遣」除外した。
そして「労働者派遣」は労働者派遣法2条1号で次のように定義した。
 (1)自己の雇用する労働者を当該雇用関係のもとに
 (2)他人の指揮命令を受けて、当該他人の為に労働に従事させることをいい
 (3)当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない。

 (1)より、労働契約関係のない労働者供給とは区別される。
 (2)より、業務処理請負と区別される※。
 (3)より、出向とも区別される。 
 
  ※労働者供給と業務処理請負の区別
   派遣法施行規則4条により、以下の要件を満たさなければ「労働者供給」となる
   ①作業の完成について事業者としての財政上・法律上の全責任を負う。
   ②作業従事労働者を指揮監督する。
   ③労働者に対して使用者としての法律に規定された全義務を負う。
   ④自ら提供する機械、設備、器財、材料、資材を使用し、
    企画、専門技術・経験を必要とする作業を行い、単に肉体的労働力提供ではない。   

  ※2004年3月施行により製造業への労働者派遣が解禁。
   そこで「業務処理請負」も増加。
   合わせて「偽装請負」が社会問題化した。    

   偽装請負とは、形式的には、業務処理請負・委託を仮装しながら、
   実態は、労働者派遣ないし労働者供給であるもので、無論違法である。
3, 労働者派遣法の内容
 
(1) 2つの派遣事業
 ①特定労働者派遣事業(常用型)
   無期以外の、短期(一年超)雇用者も含む。厚生労働大臣への届出制。
 ②一般労働者派遣事業(登録型)
   厚生労働大臣への許可制。
(2) 対象業務は拡大
 前述の変遷の通り
(3) 派遣期間
 従前の1年から、最大3年へ。
 また、26専門業務(プログラム設計、機械設計製図、財務処理、研究開発など)は無制限となる。
(4)

派遣元・派遣先の講ずべき措置
 ①派遣元 就業訓練機会確保、労働条件向上、雇用安定措置
 ②派遣先 労働者派遣契約(派遣元と派遣先との契約)に基づく就業条件遵守措置

(5) 直接雇用申込義務
 ①期間無制限業務 3年超の場合に、その労働が必要な時は、
  当該派遣労働者に対して、派遣先の直接雇用申込み義務
 ②期間制限業務  派遣元から派遣先への不継続通知義務。派遣先の申込み義務
 ③期間制限業務  ②に加え、派遣先が1年受け入れた後、
  さらにその労働が必要な時の、雇い入れ努力義務
 ※あくまで「申込み義務」に過ぎない。
  その義務違反には、厚労大臣の指導・助言、勧告、企業名公表のみ
  従って、実効力は低い
(6) 労働保護法規の適用
 基本は派遣元(契約者)
 現場の具体的労働に関するものは派遣先(労働時間、休憩、休日、育児時間、生理休暇など)
 ※尚、年休は、派遣元。
 両方が追うもものもある(均等待遇、強制労働禁止など)  
(7) 紹介予定派遣
 派遣終了後の職業紹介、派遣先に直接雇用されることを予定した制度
 事前面接(派遣先による派遣労働者に対する面接)禁止を、この紹介予定の場合は例外的に許容。
4, 派遣の形態を巡る問題
 
(1) 日雇い派遣 一日単位の派遣。派遣元は職業訓練など本来責務を負担せず、違法派遣を生みがち。
 ※これが問題となった。
(2) 二重派遣
 派遣先が、更に派遣すること。職安44条違反の違法である。
 ※違反であるが横行した。
(3) 専ら派遣
 専ら特定の一カ所の派遣先に派遣すること。直接雇用原則の脱法。派遣事業の許可の欠格事由。
 ※これも実態としては多い。
5, 派遣に関する諸問題
 
(1) 時間外労働  派遣元と三六協定。派遣元に請求する。
(2) 年休権
 年休の取得責任は使用者たる派遣元。
 年休権の行使を派遣先が渋っても制限しえない。
 派遣元は代替要員を派遣して対応すべき。
(3) 派遣契約中の、派遣元からの、派遣労働者に対する解雇
 通常の解雇問題と同じ
(4) 派遣契約中の、派遣契約中途解除を理由とする、派遣元からの解雇。
(派遣元が解雇しなければ、労働者にとっては、問題なし)
 ①労働者に責めに帰すべき事由があればやむをえない
 ②労働者の責めに帰すべき事由がない場合
  派遣先には、労働者の就業確保をとるべき(指針)
  派遣元は解雇権濫用になる。
  従って、本来は、別の派遣先を、雇用者(派遣元)が見つけて派遣しなければならない。
 ③団交応諾  
  制定時は、派遣元のみといわれていたが、今日では、派遣先、派遣元両社にあるといわれる。
 ④労災責任  両社にあり  
 ⑤派遣労働者に対するセクハラ防止義務は両社にあり
第三. 派遣法の問題点
 
1,  複雑な法令
  労働者が自分の法的地位を知り得ない
2, 間接雇用
 直接雇用原則(中間搾取禁止・生存権理念)に反する。
 例外は極めて限定的たるべし。
3, 有期雇用(派遣は有期と決まっていないが、現実には殆ど有期)
 ECのような規制(有期の合理的理由が必要、更新制限など)はない。
 不安定雇用を強いられる。
  ※今日、有期雇用は今日的問題(不安定雇用の最たるもの)
4, 労働者保護の欠如
 
(1) 派遣元の中間搾取の容認
 禁止されていた職安法の解禁と言って良い
(2) 不安定雇用
 派遣、有期雇用そのものが将来へ向けての雇用が確保されていないものであり、更に開示に向けて勉強会を開催します。
 それはまた、立場の違う労働者間の差別を生む。
(3) 使用者責任の不明瞭
 使用者の不明瞭さについては、先に
(4) 団結破壊
第四. 派遣法改正をめぐる現状
 
1, 経過
 
(1) 派遣を巡る労働者の権利を侵害する事件の続出
 大手企業の偽装請負
 派遣最大手のグッドウィル廃止(違法派遣、二重派遣など)
 日雇い派遣問題
(2) 2008年8月
 日弁連、日本労働弁護団などから派遣法抜本的見直声明
(3) 2008年・年越し派遣村
(4) 野党3党共同案から民主党案、衆議院解散により各党マニュフェストへ
(5) 3党連立内閣成立後、労働政策審議会での議論スタート
 年内8回の部会を予定
2, 問題点
 
(1) 公益代表委員の適格性
(2) 厚生労働省の姿勢
 需給調整事業課長の登録型容認発言(月刊人材ビジネス)
(3) 年内の議論終結後、公労使の意見がまとまらないとどうなるか。
 公益、使用者委員が、連立政権合意案を否定すればどうなるか。
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